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MainStageのVintage B3のコンディションコントロール
発音部にトーンホイールを使った電気機械式ドローバーオルガンは、技術的な制約により、クロストークなどの好ましくない音が混ざってしまう現象があります。しかし、これが逆にB3に独特の魅力にもなっています。Vintage B3には、こういった経年変化やコンディションを設定するパラメータが用意されています。
電気機械式トーンホイールオルガンのキーは、バスバーをわずかにこするように接触し、引っかくような短い音を発生します。キーの接点やバスバーに腐食皮膜ができると、クリック音の長さや大きさが増します。これにより、キーを押したり放したりしたときに、不規則な摩擦ノイズ(一般にキークリックと呼びます)が生じます。ノイズとは言っても、演奏音が一時的にパーカッシブな雰囲気になるため、ハモンドオルガンの愛好者には好まれています。
Vintage B3では、このキークリックのボリュームや響きを調整できます。「Click On」と「Click Off」(リリース)とで別々に、クリックの音色とボリュームをランダムに変化させることができます。
コンディションのパラメータ
「Click Minimum/Click Maximum」スライダ: 組み合わせて使用し、クリックの長さを調整します。瞬間的な短い「接触音」から引っかくような長めの「摩擦音」まで出すことができます。演奏時に、キークリックの長さが(定義した範囲内で)ランダムに調整されます。
注記: 両方のパラメータを同じ値にしても長さがランダムに変わるため、キークリックの長さが「Click Minimum」の設定値よりも短く感じられることがあります。
「Click Color」スライダ: キークリックの音色を設定します。クリックの音色はランダムに変化しますが、クリック音の高音部はここでまとめて設定できます。
「Filter Age」スライダ: フィルタの中心周波数を設定して、経年変化したコンデンサをエミュレートします。B3のトーンホイールジェネレータで生成された高音域の出力信号は、バンドパスフィルタにかけられます。このフィルタの中心周波数は、フィルタに使用されるコンデンサが古くなるにつれて変わります。
注記: これは、「Random FM」やリークによる周囲の雑音によって生まれる、ジッターの音色に影響します。「Filter Age」パラメータは、ピッチベンドを適用する場合、オルガンのイントネーション(抑揚)にも影響します。
「Leakage」スライダ: すべてのトーンホイール(弾いていないキーのトーンホイールも含む)のクロストークによって生じる信号の出力の度合いを指定することで、サウンドに「息が漏れる」ような雰囲気を加えます。
「Drawbar Leak」スライダ: ドローバーを最小の位置にしたときに漏出する出力信号のレベルを表します。ドローバーを最小の位置にしても、B3のトーンホイールからの音を完全に消すことはできません。これはトーンホイールのリーク(漏れ)、すなわち出力信号とのクロストークによる現象です。
ドローバーの漏出信号を完全に消すには、最小値に設定します。
ドローバーの漏出信号がはっきりと聞こえるようにするには、最大値に設定します。
「Crosstalk」スライダ: クロストークのレベルを設定します。回転軸にはそれぞれ2つのトーンホイールが付いていて、それらは各キー(ピッチ)につき4オクターブ離れた信号を生成します。低音のホイールの信号には、高音のホイールからの電磁誘導による聞き取り可能なクロストークがわずかに混ざります。逆の場合も同様です。詳しくは、トーンホイールによるサウンド生成を参照してください。クロストークは特定のB3トーンホイールでのみ聞こえるため、コードを演奏しても回転による振動音が響くことはありません。
「Random FM」スライダ: 古いB3で起こるトーンホイールの回転軸のずれをシミュレートします。B3のトーンホイールジェネレータが理想的な状態ならば、生成される信号は均一でチューニングされた状態になります。トーンホイールを構成するバネ、軸継ぎ手、はずみ車の3つが緻密に結合されているので、「ずれ」が生じないのです。しかし、ドライビングギアの汚れやグリースの付着による「ずれ」は補正できません。機械部分に徐々にこびりつく汚れにより、トーンホイールの回転軸がずれてきます。その影響はトーンホイール自体にも及び、結果として高周波帯域が影響を受けます。