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Logic Pro for MacのSculptureでアコースティック楽器をプログラミングする
このセクションでは、いくつかのタスクを通じて、Sculptureで特定のタイプのアコースティック楽器サウンドを作成する上で役立つプログラミングのガイドライン、ヒント、コツ、各種情報を紹介します。
Sculptureでベルサウンドを作成する
基本的なレベルであれば、ベルのようなサウンドはSculptureで簡単に作り出すことができます。本当に面白いベルを作成するにはもう少し手間をかける必要がありますが、高調波成分の度合いとディケイ/リリースフェーズでのデチューン調整によってまったく異なるサウンドに仕上がります。
Logic Proで、「#default」(または出荷時設定を保存しておいた「vanilla」)設定ファイルを読み込みます。
Object 1の「Type」ポップアップメニューから「Strike」を選択します。
「Material」パッドのボールをパッドの下端までドラッグし、「Steel」と「Glass」のほぼ中間に合わせます。いくつか音を弾いてみれば、すでにベルと似たようなサウンドになっていることが分かるでしょう。
「Media Loss」スライダをほぼ完全に下までドラッグします。この状態で再度いくつか音を弾くと、サウンドのリリースフェーズがかなり長くなっていることに気付くはずです。
「Resolution」スライダを右端までドラッグします。
「Pickup A」スライダを半分近くまで(0.48)ドラッグします。
Object 1のピックアップ位置を値0.10までドラッグします。これできれいなベルができるはずです。ノートをいくつか弾いてみてください。
ディレイユニットを有効にするには、右上のセクションにある「Delay」ボタンをクリックします。
「Delay」セクションの下部にある「sync」ボタンをクリックし、「Delay Time」スライダを20 msまでドラッグします。
「Wet Level」ノブを66 %まで上げます。
右下にある「Body EQ」ボタンをクリックして有効にします。「Model」ポップアップメニューで「Lo Mid Hi」が選択されていることを確認します。
「Low」ノブを0.55に、「Mid」ノブを0.32に、「Hi」ノブを0.20に調整します。
これで実用的なベルのサウンドができ上がりました。しかし、特にC3よりも下の音域でチューニングに問題があることに気付くはずです。ここでこうしたプログラミングアプローチを使用したのは、ほかのすべてのパラメータを設定し終わった時点で、サウンドの高調波の問題が顕著に分かるようになるからです。チューニング問題の解決策は、主として「Inner Loss」および「Stiffness」キースケールパラメータの調整にあります。
これらを調整するには、まず「Keyscale」ボタンを選択して、低音部は「Material」パッド内の緑色の水平線を、高音部は青色の水平線を上下にドラッグしてください。
設定ポップアップメニューの「別名で保存」を選択して新しい名前を付けて設定を保存し、新しいベルサウンドや次のクリスマスアルバムを制作する素材として利用してください。
Sculptureで汎用的な金管楽器サウンドを作成する
金管楽器は、電子楽器で再現するのが極めて困難です。サンプラーは適切なサンプルライブラリを使用して上手に活用すればかなり本物に近いサウンドを再現できますが、実際に金管楽器を演奏したときような自然な暖かみはありません。ここで紹介するのは、ソロ音源またはブラスセクションとして演奏できる単純で汎用的な金管楽器設定です。
Logic Proで、「#default」(または出荷時設定を保存しておいた「vanilla」)設定ファイルを読み込みます。
Object 1のタイプを「Blow」に設定します。
Object 2を有効にして、そのタイプを「Noise」に設定します。
Object 1の「Strength」をおよそ0.90に調整します。
Object 1の「VeloSens」をおよそ0.30に設定します。
中央のCを弾きながら、「Inner Loss」の「I」と「Steel」ラベルの「l」との対角線上にくるように「Material」パッドのボールをドラッグします。これでかなり本物の金管楽器らしい音が得られるはずです。
中央のCの上のEを弾きます。マンドリンの音を電話で聴いたような奇妙なサウンドが聞こえます。
中央のCとそこから1オクターブ前後低いノートをいくつか弾きながら、「Resolution」スライダを左右にドラッグします。このパラメータを操作するだけで、シタールからフルートに至るあらゆるサウンドを実現できることが分かるはずです。
「Keyscale」ボタンをクリックし、キーボードの低音部や高音部を弾きながら個別に「Resolution」スライダを調整します。さらに、演奏したいキーボードの範囲(例えば中央のCを中心として上下1オクターブ前後)でマンドリンや電話のようなサウンドが出なくなるまで「Resolution」の高/低キースケールスライダを調整します。この時点では、サウンドがまだ金管楽器らしい音質を保っている状態にしておいてください。
「Pickup A」の位置をおよそ77%に移動させます。
Waveshaperをオンにして、希望のタイプとして「Scream」を選択します。好みに合わせて「Input Scale」および「Variation」パラメータを調整します。
フィルタをオンにします。HiPassモードを選択して、「Cutoff」、「Resonance」、そのほかのフィルタパラメータを好みに合わせて調整します。(推奨設定は、「Cutoff」が0.30、「Resonance」が0.41です)。
設定ポップアップメニューから「別名で保存」を選択し、新しい名前で設定を保存します。
ミュートトランペット、フレンチホルン、さらにはシタールやフルートなど、このサウンドを応用できる方向性は実に多種多彩です。
Sculptureで金管楽器サウンドをさらに変更する
Logic Proで、以下のいずれかの操作を行います:
Waveshaperを使用して、サウンドを大幅に変えます。
「Delay」を使用して、音源の空間の広がりをエミュレートします。
「Body EQ」を使用して低音部をカットし、中音部と高音部を持ち上げます。
「Material」パッドのボールを「Nylon」のコーナーへドラッグして、この操作がサウンドの音質にどのような影響を与えるのかを確かめます。
「Object 2」のタイプとして「Blow」を選択し、Object 1およびObject 2の位置をさまざまに変えてみます。こうした方法でも、さまざまな金管楽器サウンドを作り上げることができます。
Sculptureでフルートのようなサウンドを作成する
このアプローチは、フルート、クラリネット、尺八、パンパイプなど、ほとんどの木管楽器のベースとして使用できます。
Logic Proで、「#default」(または出荷時設定を保存しておいた「vanilla」)設定ファイルを読み込みます。
フルートなどの木管楽器はモノフォニックなので、「Keyboard Mode」が「mono」に設定されていることを確認します。設定を作成したら、演奏しながらこのパラメータを試してみて、好みに合わせて選択してください。
Object 1のタイプを「Blow」に設定します。
Object 2のタイプを「Noise」に設定します。
両方のオブジェクトの「Gate」を「Always」に設定します。
Object 2の「Strength」をおよそ0.25の値に調整します。
Object 1の「VeloSens」パラメータをおよそ0.33の値に調整します。
「Material」パッドのボールを、「Inner Loss」の文字の末端と「Nylon」の文字の下端のほぼ中間まで移動します。
キーボードを弾きます。フルート風の音が聞こえるはずですが、リリースが長く、理想的なサウンドではないことは明らかです。振幅エンベロープのリリーススライダをドラッグして、およそ0.99 msに下げます。
「Pickup A」は値1.00(右端)に設定されているはずです。
Object 1のピックアップ位置をおよそ0.27に設定します。
Object 2のピックアップ位置をおよそ0.57に設定します。
Waveshaperを有効にし、「Tube-like distortion」タイプを選択します。
いくつか音を弾いて、Waveshaperの「Input Scale」パラメータと「Variation」パラメータを好みに合わせて調整します(例えば「Input Scale」を0.16、「Variation」を0.55にしてみてください)。
持続音を弾くと、ノートがホールドされている間に発生するはずの面白い音色変化(演奏者の息や唇の位置などの変化によって生じる、実際のフルートサウンド特有の変動)が、明らかに欠けていることに気付くはずです。
持続するサウンドに面白みを加えるには、何種類かのアプローチを使用できます。例えば、ビブラートモジュレータ(アフタータッチに割り当て)の使用や、エンベロープの記録や操作、「Velocity」または弦パラメータの「Media Loss」を介したWaveshaperの「Input Scale」の制御などが挙げられます。さらにはLoop Alternate Sustainモードを使用する方法も考えられるでしょう。自由に試してみてください!
設定ポップアップメニューから「別名で保存」を選択し、新しい名前で設定を保存します。
Sculptureでオルガンサウンドを作成する
オルガンのサウンドは、リリースフェーズがないので、Sculptureで最も簡単かつ迅速にエミュレートできるサウンドの1つです。基本的なトーンを作るのにキースケールパラメータを設定する必要はないので、作業が簡単です。ただし、モジュレーションルーティングや具体的なサウンドデザインによっては、あとの段階でそれらのパラメータを設定することになる場合もあります。
Logic Proで、「#default」(または出荷時設定を保存しておいた「vanilla」)設定ファイルを読み込みます。(Object 1のタイプは「Impulse」に設定されているはずです。そうではない場合は、変更してください。)
「Voices」パラメータの値を8 (または必要ならさらに大きな値)に設定します。
「Material」パッドのボールを左上のコーナーへドラッグします。
Object 2を有効にして、そのタイプを「Bow」に設定します。
Object 2の「Gate」モードを「Always」に設定します。
振幅エンベロープの「R」(Release)スライダを下端までドラッグします。
Cのコードを弾きます。フルートのようなサウンドが聞こえるはずです。
「Pickup A」を右端までドラッグします。
Cのコードを弾きます。安っぽいオルガンのサウンドが聞こえるはずです。このように、「Pickup A」の位置はサウンドの音響特性全体に対して大きな効果があります。
Cのコードを弾いたまま、Object 2のピックアップをドラッグします。サウンドが本物のオルガンらしく聞こえる位置が見つかったら、オブジェクトピックアップを放してください。
Object 2の「Timbre」パラメータを少しだけ上方向に調整します。
希望するトーンが見つかるまで、Object 2の「Variation」パラメータを少しずつ上下に調整します。
この時点で、必要ならObject 2のピックアップパラメータを別の位置に移動させてください。その際もコードを押したままで作業します。
Object 2の「Variation」パラメータと「Timbre」パラメータをさらに微調整できます。
小さなキークリックを加えるには、Object 1のタイプを「Strike」に変更して、その「Strength」と「Timbre」パラメータを調整します。
チューニングのずれたオルガンの雰囲気を少し加えるには、「Warmth」パラメータを0.150-0.200の間に設定します。
設定ポップアップメニューから「別名で保存」を選択し、新しい名前で設定を保存します。
これは、次回のオルガン設定の基礎として使用できます。
ヒント: ノートやコードを鳴らしながらパラメータを調整してください。各パラメータがサウンドにどのような影響を与えるかを耳で確認することができます。コードを弾いたときに、相互変調効果が発生することに気付くはずです。これは、コードの構成音の音程差によって生じているだけではなく、Sculptureによってそれぞれのボイスの間に相互作用が生じるためです。このような各ボイス(弦)間のわずかな変動と、ボイス同士が及ぼし合うハーモニーの相互作用は、オーケストラのバイオリンセクションが同一のフレーズを弾いていても生じるハーモニーの相互作用と非常によく似ています。
Sculptureでパーカッションサウンドを作成する
ドラムのようなパーカッションサウンドは、どれも似たようなタイプのエンベロープ曲線になる傾向があります。これらのサウンドは、音響特性のほとんどが打音時に現れ、次に短いディケイフェーズが続きます。リリースフェーズは、インストゥルメント自体(ウッドブロックかスネアドラムか)とそのインストゥルメントが置かれている周囲の空間(洞窟の中や浴室など)によって左右されます。
Logic Proで、「#default」(または出荷時設定を保存しておいた「vanilla」)設定ファイルを読み込みます。
Object 1のタイプを「Strike」に設定します。
Object 2を有効にして、そのタイプを「Disturb 2-sided」に設定します。
Object 2の「Gate」モードを「Always」に設定します。
Object 1の「Strength」はおよそ0.84です。
Object 2の「Strength」はおよそ0.34です。
「Media Loss」スライダを上下にドラッグしながら弾いて、その影響を耳で確かめます。最適な設定を見つけてください。
同様に、「Material」パッドのボール位置も変更できます。ただし、サウンドの全体的なトーンにどのような効果があるかは「Media Loss」の値に大きく左右されます。
「Body EQ」や「Filter」を有効にして、好みに合わせて設定を調整してください。
設定ポップアップメニューから「別名で保存」を選択し、新しい名前で設定を保存します。