Xsan SANの設計について計画を立てる際の検討事項
以下に、SANの設計についてより良い決定を行うのに役立つ検討事項を示します。
どのくらいのストレージが必要か?
Xsan SANにユーザデータ用のストレージを追加するのは簡単なので、最初は適度な量を用意するだけで十分です。ストレージは、後で必要に応じて追加できます。
ただし、ジャーナルデータ用のストレージは追加できないため、ジャーナルデータ用には最初から十分な領域を割り当てるようにしてください。
メタデータ用に1つのストレージプール全体を追加して、ジャーナルデータ用に別のストレージプールを追加することができます。
ワークフローに関する検討事項
ユーザのワークフローには、いくつのファイル共有が必要ですか?たとえば、異なる複数のユーザまたはグループが同一のファイル上で同時にまたは連続して作業を行う場合、これらのファイルを1つのボリュームに保存すれば、コピーの維持や引き渡しをしなくて済みます。Xsanでは、ファイルロックを使用して、複数のファイルの1つのコピーに対する共有アクセスが管理されます。
パフォーマンスに関する検討事項
高解像度のビデオキャプチャや再生など、実行可能な最高速度でのデータ転送を継続する必要があるアプリケーションにSANが対応する場合は、以下に示すパフォーマンスに関する考慮事項を念頭に置いてSANを設計してください:
パフォーマンスの高いRAID方式を使用して、LUN(RAIDアレイ)を設定します。
並列処理を強化するには、LUNをRAIDコントローラ全体に展開します。データが各LUNにストライプされるため、2台のRAIDコントローラの同時転送によるメリットが得られます。
スループットを向上させるには、クライアントのFibre Channelカードの両方のポートをファブリックに接続します。
Xsan 5とDLCを使用するクライアントでは、リアルタイム処理をFibre接続経由で実行してください。
ファイルシステムのメタデータをユーザデータとは別のストレージプールに保存し、メタデータのLUNがユーザデータのLUNと同じRAIDコントローラ上にないようにします。
新しいボリュームを作成するときに、ジャーナルデータ用に別のストレージプールを使用できます。これにより、ファイルの作成や削除など、一部の作業のパフォーマンスが大幅に向上します。
SANメタデータ用に別のEthernetネットワーク(各SANコンピュータに追加のEthernetポートが必要です)を使用します。
SAN上のコンピュータがすべてMacコンピュータの場合は、ボリュームの拡張属性を有効にして、複数の非表示ファイルに保存されるファイル情報のオーバーヘッドをなくします。
可用性に関する検討事項
データにとって高可用性が重要な場合は、メタデータコントローラのフェイルオーバーに対応するために、複数のメタデータコントローラを設定します。また、Fibre Channelスイッチを冗長化して、各クライアント、メタデータコントローラ、およびストレージデバイス間でFibre Channel接続を二重にすることも検討してください。
セキュリティの検討事項
セキュリティ保護され、相互に分離されている必要のあるプロジェクトをSANで対応する場合は、プロジェクトごとにボリュームを作成し、ボリュームに適切なACLを設定して、不適切なクライアントやユーザがボリュームに保存されたファイルにアクセスする可能性を排除できます。
SAN管理者は、どのクライアントコンピュータをSANクライアントにするかを制御します。SANクライアントまたはコントローラでないコンピュータのユーザは、SANボリュームをブラウズまたはマウントできません。
ただし、ボリュームを使用できるXsanコンピュータを指定することはできません。macOSまたはmacOS Serverが搭載されているSANコンピュータのユーザは、すべてのSANボリュームを自分でマウントできます。
Serverアプリケーションでアクセス制御リスト(ACL)を設定したり、Finderの標準のファイルアクセス権を使ってユーザとグループにフォルダへのアクセス権を割り当てることもできます。
LUNのRAID方式を選択する
SANのデータの信頼性および復元可能性の大部分は、Xsan自体ではなく、ストレージプールとボリュームを作成するために組み合わせたRAIDアレイにより提供されます。SANを設定する前に、RAIDシステムの構成または管理ソフトウェアを使って、特定のRAID方式に基づくLUNを準備します。
警告: スタンバイコントローラがない場合にメタデータコントローラが失われると、ボリューム上のすべてのデータが失われます。スタンバイコントローラを設定することを強くお勧めします。
警告: メタデータ・ストレージ・プールのLUNで障害が発生して復元できない場合は、ボリューム上のすべてのデータが失われます。Xsanボリュームを作成する際は、冗長なLUN(RAID 0以外のRAID方式に基づくLUN)のみを使用することを強くお勧めします。
RAID 0アレイ(ストライピングのみ)で構成されたLUN、または1つのドライブに基づくLUNは、障害が発生した場合に復元することが困難または不可能です。このような保護されていないLUNは、失われても支障のないスクラッチファイルなどのデータを保存するストレージプールだけで使用するようにしてください。
ほとんどのRAIDシステムは、一般的なRAIDレベルすべてに対応しています。次の表に示すように、RAID方式ごとに、提供されるパフォーマンス、データ保護、およびストレージ効率のバランスが異なります。
RAIDレベル | ストレージ効率 | 読み出しパフォーマンス | 書き込みパフォーマンス | データ保護 |
---|---|---|---|---|
RAID 0 | 最高 | 非常に高い | 最高 | いいえ |
RAID 1 | 低 | 高 | 中 | はい |
RAID 3 | 高〜非常に高い | 中 | 中 | はい |
RAID 5 | 高〜非常に高い | 高 | 高 | はい |
RAID 0+1 | 低 | 高 | 高 | はい |
ボリュームの数を決定する
ボリュームは、SANの共有ストレージの最も大きな単位です。ユーザがファイルへの共有アクセスを必要とする場合は、それらのファイルを同じボリュームに保存します。これにより、ユーザ間でファイルのコピーを受け渡しする必要がなくなります。
ただし、セキュリティが重要な場合は、Xsanクライアントからボリュームをマウント解除してもクライアントからのアクセスを制御できないことに注意してください。macOSまたはmacOS Serverが搭載されているコンピュータのユーザは、自分でSANボリュームをマウントできます。
一般的にセキュリティと共有アクセスのバランスを取るには、ボリュームを1つ作成し、フォルダアクセス権またはServerアプリケーションのACLを使用して、アクセスを制御します。
ボリュームの構成方法を決定する
定義済みのフォルダを作成することで、ユーザがボリュームのデータを整理できるようにしたり、ユーザをボリューム内の特定の領域に制限したりできます。Serverアプリケーションを使用してアクセス権を割り当てることで、これらのフォルダへのアクセスを制御できます。
メタデータコントローラを選択する
SANメタデータコントローラにするコンピュータを1台以上選択する必要があります。SANメタデータコントローラは、ファイルシステムのメタデータの管理を担当するコンピュータです。
注記: ファイルシステムのメタデータとジャーナルデータは、メタデータコントローラ自体ではなくSANボリュームに保存されます。以下の「ユーザデータをメタデータとジャーナルデータと共に保存する」を参照してください。
データにとって高可用性が重要な場合は、メタデータコントローラのフェイルオーバーに対応するために、複数のメタデータコントローラを設定します。
パフォーマンスが重要な場合は、メタデータコントローラ上でほかのサーバサービスを実行したり、コントローラを使用してAFPまたはNFS経由でSANボリュームを再共有したりしないでください。
メタデータとジャーナルデータのストレージのニーズを予測する
ボリュームについて説明するメタデータとジャーナルデータは、ボリュームのメタデータコントローラではなくボリューム自体に保存されます。メタデータは、ボリューム内の最初のストレージプールに保存されます。ジャーナルデータは、ボリューム内のどのストレージプールにも保存できます。ジャーナルデータを保存するストレージプールは1つのみにする必要があります。
Xsanボリュームのメタデータに必要な容量を予測するには、ボリューム上の1000万個のファイルに対して、ボリュームのメタデータ・ストレージ・プールに約10 GBのメタデータが必要になると想定してください。
ジャーナルには、64 KB〜512 MBが必要です。Xsanでは、ボリュームを作成するときに固定サイズで構成されます。サイズが小さいため、ジャーナル用のストレージプールには1つのRAID 1 LUNを使用できます。ジャーナル用のストレージプールを個別に作成することによるパフォーマンス上のメリットを最大にするには、物理ディスク全体をRAID 1 LUN専用にしてください。
ユーザデータをメタデータとジャーナルデータと共に保存する
1つのストレージプール(メタデータ、ジャーナルデータ、およびユーザデータを含む)のみを含むボリュームを作成することは可能ですが、パフォーマンスを重視する場合はお勧めしません。